読了メモ

ない、なにも、なにもかも

父親の介護(古い日記より)

一年ほど前の下書きをそのまま公開。

 

 

耄碌していく祖母のもとを、父親が月に一度ほど訪れている。
生活の指導のようなことをしようとしているので、「老いていくひとに『自立して上手く生きている人であってほしい』という願望を押し付けてしまってはいないか。」と言ってしまった。父はしばらく黙っていた。言い過ぎた。

祖母は先月、八十半ばでやっと免許を返納した。父と叔父で説得して返納させるのに三年がかかった。正確には、免許の返納がうまくいかなかったので車を廃車した。そして外出が減った。

 

時間的余裕があるとはいえ、一ヶ月に一度、片道5時間かけて父は祖母の元に通う。
そこで父は料理をしない。祖母に料理をさせるわけではなく、共に外出して惣菜を買うようにしている。タクシーで出かけて食糧を手に入れるというのが、免許返納に際して、自家用車の代わりの祖母の生活手段として父が提案したものだった。

提案は合理的だ。祖母にはそれだけの資力がある。(そもそも車の維持費だって掛かっていたはずだ。)だが、祖母は提案になかなか乗らなかった。そして廃車から一ヶ月経った今、タクシーは利用されない。

ごく近所のドラッグストアで買ったハムが10個も溜まっていること、冷蔵庫の食材や机の上の饅頭が黴びたまま残っていること。

父を不安にさせ、苛立たせているのだろう。